業務委託の活用法!外部のプロが社内のディレクターを進化させる理由。
2016/04/04
多分日本で一番ディレクターを応援している(と意気込む!)INNOCENTIVEが送るディレクター進化論。
シリーズ第三弾に登場いただくのは、ディレクターの小嶋 裕亮さんです。
INNOCENTIVEは昨年より、業務委託の形態でディレクションの代行や研修・ワークショップの提供を始めました。
そこで今回は、ディレクター育成の手段としての業務委託について、実際に業務委託でディレクターのスキルアップ支援をしている小嶋さんにお話していただきます。
小嶋さんは現在、Facebookグループが1000人を超える日本ディレクション協会(ディレ協)の事務局長を務め、「0からのWebディレクション講座」の講師としてもご活躍されていますが、Web業界に入ったのは意外と遅めの31歳。
デザイナーとしてスタートし、そこから約7年の間、数々の現場を経験し、現場に応じて柔軟にデザイン、コーディング、ディレクションやその他編集などの業務を行ってきました。最近は、ディレクション代行だけでなく、制作現場の体制作りのコンサルティングやマネジメントなども行うことが多いそうです。
それではさっそく、お話を伺います!
■プロジェクトをうまく回すには、ディレクター・企業ともに努力をしていかなければならない
――ディレクターさんと話をすると、携わっているプロジェクトが大変だという声を数多く聞きます。大変だと愚痴をこぼすだけの人も居るんですが(笑)、「自分がスキルアップすることでプロジェクトを成功させたい」という思いで、多くのディレクターさんがディレ協のイベントに参加しています。
そこで疑問に思うのが、プロジェクトをうまく回すには、ディレクターがスキルアップするしか方法はないのでしょうか?
小嶋:のっけからネガティブだなぁ。笑
もちろん、ワイヤーフレーム作成とかクライアントへのヒアリングとか、ディレクターがいろいろなスキルを身に付ける必要はあるよね。ただ、ディレクター個人の能力を成長させるだけでなく、能力が発揮される環境をつくることで、プロジェクトがどんどんうまく回っていくと思う。具体的な話はあとで話すとして、そもそもディレクターって何をする人だと思ってる?
――Webサイト制作のディレクションをする人・・・じゃわからないですね。えーっと、Webサイト制作におけるすべての責任を持つ人ですかね?とにかく「何でも屋さん」だと思って仕事をしています。
小嶋:そう。ディレ協をやっていても、「ディレクターって何をする仕事なんですか?」と真正面から聞かれることが山ほどあるんだ。ディレクター自身がWebディレクションという仕事をわかっていない。
そして採用する側も同じように、ディレクターの仕事がいまひとつピンときていないから、正社員でディレクターを採用しても教育できなかったり、ディレクターにわたす権限と情報が不充分で、プロジェクトはうまく回らなかったりすることがある。これではディレクターがなかなか成長しずらいんだよね。
ディレクター本人の努力だけでなく、周囲の人もディレクターの役割を理解して円滑にプロジェクトを回すために協力していく必要があるということだね。
――なるほど。では、ずばり、小嶋さんにとってディレクターとは?
小嶋:デザイナーやコーダーなど、それぞれのプロフェッショナルを有機的に動くようにするべき人、それをミッションとしている人だね。ディレクターの仕事は、最後までやり切る・作り切ること。というのも、実装責任・実現責任があるからね。
ディレクターはスキルセットや作業ベースで評価されがちだけど、イニシアチブやリーダーシップ、マネジメントなどの色彩が濃いので、「どうあるか」「どう動くか」といった「あり方」が求められる比率が高い。
やり切る・作り切るために、ディレクターは常に判断を求められるけれど、その都度正しく判断をするためには経験が必要なんだ。
――イニシアチブ、リーダーシップ、マネジメント・・・もともと幅広いと思っていたディレクターのカバー領域がさらに広がってしまいました。こんなに幅広い業務を行うディレクターは、どうやって成長していけばいいのでしょうか?どうすればプロジェクトをうまく回していけるんでしょうか?
■プロジェクトをうまく回すには、スキル・ノウハウ、「あり方」が重要
小嶋:ディレクターがプロジェクトをうまく回すために必要なものは、スキル・ノウハウだけでなく、「あり方」なんだ。そしてその「あり方」は、現場で経験を積むことによってブラッシュアップされる。
――それぞれの力を伸ばしていくためには、具体的にはどうすればいいのでしょうか?
小嶋:スキル・ノウハウの部分は、本やセミナー、動画などを使ってインプットしていけばいいと思う。ただ、それだけでは経験には結びつかない。つまり、現場でたくさんの判断を求められた時に、正しく判断できるようにはなかなかならない。
吸収した知識を現場に活かしながら、現場の状況に合わせて最適な判断をしていく、ということを繰り返すことでしかディレクターは成長できないと思うんだ。
――それに対して企業ができることと言えば、本やセミナー代を補助するとか、社内外での研修を実施するという感じでしょうか?
小嶋:そうだね。社内で研修ができる人や環境があれば実施していけばいいし、社外の研修に参加して、外部のディレクターとつながっていくのもいいね。それ以外では、業務委託で外からプロのディレクターを呼んで一緒に業務を行いながらスキルアップを支援する、という方法もあるよ。
■外部のプロディレクターによるOJTで、ディレクターに良質な経験を積ませる
――外部の人材にOJT(On the Job Training)をしてもらうということですか?
小嶋:そうそう。本やセミナーを現場にどう活かせばいいかわからない、とか、社内にディレクターが一人しかいなくて相談する相手がいない、というディレクターにとって、業務委託で外からプロのディレクターを呼んでもらって、その人の仕事を見て盗める環境は早く成長するチャンスになると思う。
実際、最近は、ディレクターの業務サポートと社員のスキルアップの補助を依頼されることが多いよ。
――それすごくいいですね!!以前、事業会社で、プロデューサー・開発ディレクター(私)・制作ディレクターというチーム構成でサイトの運用をやっていたのですが、全員ディレクター経験が少なくて、新たな企画をやったとき、すべてが手さぐり状態でトラブルも多くて大変でした。あの時に、小嶋さんのような人が近くに居て、必要な時に相談ができていたら、よりいいものを短期間で作れていた気がするし、精神的にも安心して仕事ができていたと思います。
小嶋:プロジェクトで起こるトラブルっていろいろな要素が絡んでいたりするから、本やセミナーから得た知識をそのまま使えるということが少ないと思う。だからこそ、プロジェクトをうまく回すには、どう判断してどう動くか、そうしたディレクターの「あり方」が重要になってくる。
ディレクターとしての「あり方」をブラッシュアップしていくのは、もちろん自分で勉強して現場で経験を積むことでできる。ただ、僕らが業務委託で現場に入って、必要な環境をつくりながら一緒に制作物を作り上げたり、「あり方」を見せたりすることによって、ディレクターにより良い経験を積ませることができて、それがディレクターの成長を加速させると思っているんだ。つまり、ディレクターがするっと成果を出せるように、僕らがアシストするということだね。
――良質な経験がディレクターの成長を加速させる。若手ディレクターが一人で苦労しているプロジェクトには特に効果がありそうですね。
小嶋:そうだね。あ、一点補足すると、僕らディレクターは、なるべく早い段階、企画やアイデアを形にするところからお手伝いをする方が、能力を発揮しやすいんだ。たとえば、企画段階から入っていければ、具体的な作りを想定した上でスケジュールや予算などを決められるから、実際に制作に入ったあとのトラブルを減らすことができるとかね。
――なるほど!「このプロジェクトはこれを目指しているから、こことここの部分をお願いします」みたいにしっかりと業務を切り出してから依頼するのではなくて、依頼する業務の切り出し部分から相談してしまえばいいわけですね。
小嶋:そうそう。うまく業務委託を使っていくためには、少しでも早く、ぱっと思いついて「ちょっと相談乗ってもらおうかな」というレベルからディレクターを呼んでもらった方が、実現可能で成果を上げるプロジェクトにしていくことができるんだ。
――依頼するからにはちゃんと準備しないといけないと思いがちですが、まずは相談してしまった方がいいんですね。本日はどうもありがとうございました!!
小嶋 裕亮プロフィール
Web制作・アプリ開発ディレクター。Web制作は企画・デザイン・構築まで一通り経験。現在はフリーランスとしてWebディレクションや、企業の制作力・ディレクション力向上の支援を行う。
日本ディレクション協会(ディレ協)の事務局長。「0からのWebディレクション講座」の講師も務める。1/31(土)には「ディレクターキャリアアップセミナー」を実施。
企業の皆様:業務委託のご相談はこちらから
ディレクターが足りない!育たない! そんな企業の声にお応えしています。講師経験を持ったディレクターたちが御社の助けに参ります。
インタビュアー・エディター:笠原 麻未
カメラマン:柴田 大樹
投稿者プロフィール
-
SPEC代表
株式会社イノセンティブ 取締役
一般社団法人 日本ディレクション協会 理事
東京都品川区出身の1976年7月生まれ。桜美林大学経済学部を卒業後、ソニー株式会社にて、シックスシグマというマネジメントツールのR&D、広報などクリエイティブ業務に従事。2005年からインターネットベンチャーでWebディレクターとして数社経験。その後「LINKAGE」という商号でフリーランスとしてWebディレクション業務で活動。コーポレート、リクルート、モバイル、デジタルサイネージ、リアル連動など様々なWebサイト、システムの構築、新規事業プロジェクト企画、立ち上げを経験。2012年6月に株式会社イノセンティブ取締役に就任。GARAGE AKIHABARAを立ち上げる。日本ディレクション協会ファウンダー。メンタルマネージャー資格保有。